命の尊厳を問う、手塚治虫が生んだ不朽の名作『ブラック・ジャック』。
漫画、アニメ、OVA、劇場版、実写ドラマ等々、1973年の初登場から今日まで多くの作品が世に送られてきました。
長年にわたって人々に慕われ愛されるキャラクター”ブラック・ジャック”は他の漫画に登場するキャラクターと一線を画した魅力を持っています。
医者であることから命と向き合い、彼の仕事観、人生観を名セリフと共にご紹介します。
Contents
漫画(手塚治虫の「ブラック・ジャック」連載)
この空と海と 大自然の美しさのわからん奴は生きる値打ちなどない
文庫15 第81話「宝島」秋田書店より
いきなり衝撃的な描写ですが、どんな憎い相手でも自分の患者であれば全力で手術して命を救ってきたブラック・ジャックが、自然の美しさを理解せず金のことばかり考える強盗団に言い放った唯一の強烈なセリフ!
高額な慰謝料を請求することで有名なブラック・ジャックが放つ言葉としては矛盾しているようにも感じられますが、実はブラック・ジャック、自分のお金で自然豊かな島々を購入しているという事実があるのです。
このセリフの飛び出す「宝島」という話は、彼なりの美学とでもいうべき自然を尊び守ろうとする考えに共感できる内容となっています。
誰にでもあることですが、目先の利益を追求するあまり、周りが見えず悪影響を及ぼす視野の狭い人が世の中にはいます。
道端に咲く花の良さを知ろうとしない、そもそも見ようとしなければ、何のために生きているのかわかりませんね。
この瞬間は永遠なんだ
文庫1 第50話 「めぐり会い」秋田書店より
如月恵という船医がピノコに話す回顧録として話が進む「めぐり会い」に出てくるセリフ。
彼はブラック・ジャックが医局員時代に恋仲となっていた人物でした。(如月恵はその頃は女性でした。)
恋愛についてほとんど語られることのないブラック・ジャックにおいて、唯一正直な気持ちを相手に告白するシーンが描かれています。
病により手術を受けることになった如月恵は、術前にブラック・ジャックに別れを口にしますが、お互いの気持ちがつながったこのひと時は永遠のものになるとブラック・ジャックが語ったシーンです。
どんな出来事も、過ぎ去れば過去のひと時として埋もれていきます。
しかし、自分にとって特別な時間というものは、永遠に胸に留まっていないでしょうか。
結婚した時、子供が生まれた時、そうでなくても日常のひと時が、知らず知らずのうちに自分自身の永遠の瞬間となっているのです。
それでも私は人を治すんだ。自分が生きるために!
文庫3 第56話 「ふたりの黒い医者」秋田書店より
命を救うブラック・ジャックとは対極的な存在である安楽死のプロ、ドクター・キリコ。
ある家族の母親を安楽死させようとするドクター・キリコに対し、子供たちから依頼を受けたブラック・ジャックは手術を引き受け見事命を救うことで話は終わろうとします、、、が、ここで衝撃の一報が入ります!
事故により母親と子供たちが全員亡くなってしまったと、、、
命を救ったはずが、より悪い結末となってしまったことにショックを受けるブラックジャックに対し、ドクター・キリコは大声で笑い去っていきます。
結果がどうであろうと、信念を曲げないブラック・ジャックは、これからも人の命を救うことに全力を尽くす決意を表し叫ぶのでした。
不発弾の爆発事故(事件)で瀕死の重傷を負ったブラック・ジャックを救った恩師・本間丈太郎先生も「人間が生きものの生き死にを自由にしようなんておこがましいとは思わんかね...」と語ったように、医療は時として命の世界の自然の原理に逆らうことなのかもしれません、、、しかし、人として成せること、人だからこそできることが医療であり、命の尊厳に正面から向き合うことなのだとブラック・ジャックが教えてくれているような気がしてなりません。
人間もバカだ 。それに気づいてもまだやってる
文庫3 第123話 「ディンゴ」秋田書店より
農薬の散布で変異を起こした寄生虫により多くの人が死に絶える町で奮闘するブラック・ジャック。
原因が分かった後も、畑では今日も農薬散布が行われていました。
地球環境を汚すな、食べ物を大切にしよう、戦争は止めよう、、、口に出していても人間は同じ過ちを繰り返していることは歴史が語っています。
身を亡ぼすまで辞めない心理を理解することはできませんが、群れとなり社会を形成し、責任の所在地が曖昧となると人は過ちを犯すようにできているのかもしれませんね。
TVアニメ(讀賣テレビ『ブラック・ジャック21』、TBS系列『RAY THE ANIMATION』)
神だってわからないことはあるさ
讀賣テレビ『ブラック・ジャック21』 第6話「空飛ぶ病院」より
はるか上空を飛ぶ飛行機の中で事件発生。
事態解決のためにブラック・ジャックが出した奇抜なアイデアに神でもできないと反対する白拍子泰彦医師に対してブラック・ジャックが放った言葉。
「神にかけて誓う」「神のみぞ知る」、人間は神様に肖りたいと思うあまり、なんでも神様に頼ってしまいますが、言い訳しても始まらないときこそ、その人の真の勇気や気迫が表れるのではないでしょうか。
そいつがわかったら、生きるのが面白くない
TBS系列『RAY THE ANIMATION』 第1話より
両眼を失うものの、ブラック・ジャックの手術により視力が戻った春日野零は、移植された透視眼(物質を透視できる眼)を使って普通の人には見えない病気を見つけ出し手術する凄腕の医師となっていました。
ある日、ブラック・ジャックを見つけた零は、この眼を使っても人の心までは見えないと語ります。
そんな彼女にブラック・ジャックはこの言葉を口にして去っていきました。
人の心が読めるテレパスなんて能力を描いたSF映画やドラマがあったりしますが、人の心が読めることでかえって不幸になったり、人間不信になったりして心を閉ざす描写が見られたりします。
人がどう思っているのか知りたい、その衝動が他人に興味を持ち、人と人がつながるきっかけを作ってくれているのかもしれません。
「人の心の中が見えない」、それは私たちが人と人としてつながることに対して意味を持たせてくれる重要なことなのかもしれませんね。
OVA(手塚プロダクション製作、出崎統監督のオリジナル・ビデオ・アニメーション)
俺は奇跡なんかは信じない男だ。だが正直、あの時ばかりは少しだけ借りてみてもいいと思った、何かの、力を、、、
カルテV 「サンメリーダの鴞」より
旅の途中で出会った青年レスリーに施された手術の痕から、ブラック・ジャックは自分の腕を超える医師の存在に興味を持ち、その人物を探す旅に出ます。
ようやく天才医師と目される老人エルネストと出会うも、彼は自分の力ではなく神の力によってレスリーを救ったのだと言い張ります。
何としてもエルネストの技術が見たいブラック・ジャックでしたが、駆け付けた軍の銃弾にエルネストは倒れてしまいます。
これまでにないほどのスピードと正確さで緊急手術を行うブラック・ジャックでしたが、その願いと努力もむなしくエルネストは亡くなってしまいました。
帰国の途につくブラック・ジャックは、この言葉とともに、深い悲しみに包まれるのでした。
手術で患者を助けることができない描写は数えるほどしかないブラック・ジャックですが、彼の限界をも超える現実に直面した時、天才医師がどう思ったのかを表現した心に突き刺さるシーンです。
科学で証明できないものは信じない、そういう信念を持つブラック・ジャックですが、もし目に見えない力が世の中に存在するのならば、この時ほど借りたいと思ったことは無いでしょう、、、。
だが、だが俺は、自分のこの目で見ない限り、この体で感じない限り何も信じない、あるのなら見せてもらおうか、お前の意志力を、不思議な力を
カルテVIII 「緑の想い」より
不思議な力を秘めた巨木と、その木から体に種を植えられた少年ロレンス。
科学では説明ができない神秘に満ちた出来事に直面したブラック・ジャックは、少年ロレンスと一人の老人アルマンドにしか語りかけない巨木を前にします。
伝説や言い伝えではなく、自分自らこの眼で見なければ不思議な力も出来事も現実として受け入れ信じないとするブラック・ジャックは巨木を前に叫ぶのでした。
『ブラック・ジャック』は現実路線を描きつつも、時に神秘的な力や未知との遭遇をする回も描かれます。私たちの生活において、科学で証明できない超常現象はあまり身近なことであありませんが、もし目の前にしたとき、果たして私たちは冷静でいられるでしょうか、、、
この『緑の想い』は少しジブリっぽい世界観と雰囲気があって私個人としてはとても好きな作品です。余談ですが。
そうだ、そうさ、まだ負けるわけにはいかない、いかないんだ、、、
カルテX 「しずむ女」より
工場からの排水によって汚染された三ヶ月湾の魚を食べた人々が病に苦しむ街でブラック・ジャックは戦っていました。
ある日、「三ヶ月病」に侵された少女・月子と出会います。
月子の手術とリハビリを通じて、ブラック・ジャックの心の中には恋と似たような感情が芽生えるのですが、ブラック・ジャックのために青真珠を探すため海に出た月子は嵐にのまれ亡くなってしまいます。
月子を元気にするという目標を失い三ヶ月湾を後にするブラック・ジャックは、公害問題との戦いをやめない決意をするのでした。
人は時に目標を失うと憔悴したりしますが、そんな時でも再び立ち上がることが大切だということをこのブラック・ジャックの想いから気づかされます。
ブラック・ジャックが目に涙を浮かべるシーンがとても珍しく印象的な話です。
劇場版(OVAの流れを汲む1996年公開、松竹配給の映画)
人それぞれ、仕事のやり方には色々あっていいんじゃないかな
『ブラック・ジャック 劇場版』(1996年)より
驚異的な身体能力を持つ超人類7の存在が確認された世界で、ある製薬会社から原因究明に協力することになったブラック・ジャック。
巨大な陰謀の渦に飲み込まれるも、戦いに勝利して物語を終えます。
ラストでは一緒に戦ったチームからオファーを受けますが、ブラック・ジャックは仕事には人それぞれやり方が色々あっていいのではないかと語り、再び闇の世界へ戻っていくのでした。
とても熱心な誘いを受けるも、自分の仕事のやり方を貫き通すブラック・ジャックが印象的です。
私たちの世界でも、会社組織で仕事していると少し話は違うかもしれませんが、仕事のやり方は他人からとやかく言われるものではなく、自分の納得いく形で行うことができるのがプロであり理想の形に思えます。
あくまでブラック・ジャックは個人の仕事をしている人物ですが、彼の仕事観からは色々と考えさせられますね。
まとめ
神のようなメス捌きで奇跡を生み出す天才医師ブラック・ジャック。
孤高のヒーローとして、時にダークな部分のあるキャラクターが放つ言葉には命・仕事・人生における深いメッセージが込められています。
私たちも、視野が狭く、利己的になりがちな部分も大いにあるかもしれません。
ブラック・ジャックが語るように、自分のブレない信念と、仕事に対する誇り、哲学を身に着け、人として恥ずかしくない人生を歩んでいくことが何より大切です。
『ブラック・ジャック』を知ることで、彼の美学・哲学から私たちもより多くのことを学びたいものです。
ブラック・ジャックのみならず、手塚治虫の他の作品・魅力についてはこちらもどうぞ
(手塚治虫 TEZUKA OSAMU OFFICIAL)

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